女人禁制の件。①
大相撲の初場所が終わった。
全横綱不在という異常事態の中、若い力士の奮闘ぶりが清々しかった。
思えば昨年の角界は騒動続きで、清々しさのカケラもなかった。
数々の暴行事件、それに伴う名横綱の引退や、部屋の解散と、ネガティブなニュースに振り回された。
そんな中でも、私的に少し異質と感じる事件があった。
「土俵は女人禁制事件」
である。
昨年、京都で催されていた春巡業において、土俵上で挨拶していた市長が、いきなり倒れた。
くも膜下出血であった。
なす術もなくマゴつくばかりのオッサン連中を押しのけ、1人の女性が土俵に立ち入った。
看護師を名乗るこの女性は、速やかに救命措置に入り
それに呼応するように、さらに数人の女性が駆けつけた。
その最中、驚くべきアナウンスが場内に流れた。
「女性の方は土俵から降りて下さい!」
繰り返されるアナウンスと併せ、周囲にいる役立たず連中までもが、同様の要求をしたという。
ヒトの命を救おうと、懸命に努力している女性達に対し
手をこまねいて見ているダケの木偶の坊が、その場を離れろと要求する。
こんなバカげた話はない。
そんな理不尽に従う医療従事者などいない。
土俵にいた女性の1人は、さすがに声を荒げて抗議したというが、当然である。
その後、救急搬送された市長は、こうした救命措置の甲斐もあり、一命をとりとめた。
しかし、それでメデタシとはいかない。
「ヒトの命よりも、伝統が大事なのか」
当然の如く、今回の件を世論は一斉に批難した。
ふてぶてしい例の理事長も、さすがに不適切であったと謝罪するハメになったのだけれど
この騒動、やや珍妙な議論に発展する。
というモノで・・・
え ? い や い や 、 違 う よ ね ! ?
今回、最も協会が批難されるべきなのは
「こうした有事の際に対応できる医療体制(要は危機管理体制)が、まっっったく整えられてなかった」
という点でしょ!?
そもそも相撲自体が、大きな危険を伴う競技なのに!
今回は、たまたま知識と技術を持った女性がいてくださったから
協会は「女性差別だ」などという“的外れな批判を受ける程度”で済んでいるけれど、ヘタをすれば
「協会の危機管理体制がズサンなせいで、ヒトが亡くなった」
という、はるかに深刻な事態を招いていたハズである。
それをこそ批難するべきだし、協会も即座に改善するべきなのに
何、その飛躍した論理!
私は逆に問いたくなる。
「ヒトの命よりも、自分の権利の方が大事なのか」
と。
(続)